モーゲージって何?
「モーゲージ(mortgage)」は住宅ローンのことを指します。特に、家や土地といった不動産を担保(もし返せなくなったら銀行が差し押さえられる権利)にして借りるローンのことをいいます。
かんたんにいうと
- 💰 銀行からお金を借りる
- 🏠 家を担保にする
- 📅 長い期間(20年~30年など)で返していく
例えば:
4,000万円の家を買いたいけど、手元に現金がない人は銀行から「モーゲージ」を借ります。
→ 借りたお金で家を買い、毎月コツコツ返済します。
→ もし返済できなくなったら、銀行はその家を差し押さえて売る権利を持っています。
ポイント
- 「モーゲージ」=ただのローンではなく、不動産を担保にしたローン
- アメリカでは特に 30年固定金利モーゲージ が一般的(ずっと同じ金利で返せる)
- 日本語では「住宅ローン」と訳されることが多い
👉 つまりモーゲージは「家を買うための特別なローン」で、借りる人にとっては人生最大の借金になることがほとんどです。
要するに「モーゲージ=住宅ローン」で覚えてOKです!
金利上昇がもたらす急激な負担増
アメリカで住宅を買うコストは、価格の上昇以上に住宅ローン金利の急騰によって悪化しています。
例えば40万ドルの借入れでは、金利が3%から7%に上昇すると月々の返済は 1,686ドル → 2,661ドル に増加。さらに近年は住宅価格も高騰しており、5年前に比べて平均9万ドル多い借入れを高金利で背負わされる状況です。
その結果、低金利でローンを固定できた層と高金利で購入せざるを得なかった層の間に大きな「富の断絶」が生まれています。
ロックイン効果と住宅市場の停滞
Redfinのデータによると、アメリカ人は住宅に住み続ける期間が長期化しています。
理由は明快で、低金利ローンを手放してまで高金利ローンに乗り換える合理性がないためです。
この「ロックイン効果」により、転職や移住を抑制する動きが広がり、住宅供給の地域的な偏りを生んでいます。
- 北東部:在庫不足が深刻化
- フロリダやテキサス:パンデミック期に移住が集中したが、在庫急増と価格下落が進行
消費マインドと支出のねじれ
ここ2年間、消費者マインド調査はリーマン危機時並みに悪化しています。
失業不安・インフレ懸念が強まる一方で、実際には消費支出は旺盛です。
- Home Depot:売上+5%、取引件数は8年ぶりの低水準
- Walmart:インフレ懸念を示しつつ通期見通しを上方修正
- American Express:利用者は「景気に自信なし」と回答しながらもカード利用は増加
背景には、低金利ローンを持つ層が住宅費負担を抑え、消費余力を確保している構造があります。
世代間よりも深刻な「世代内格差」
- アメリカ人の65%が住宅を所有し、そのうち40%はローン完済済み → 金利上昇の影響なし
- 長期所有者の住宅費負担:所得の9%以下
- 直近購入者の住宅費負担:所得の25%前後
さらに、ミレニアル世代の内部格差が拡大。
上位10%の富裕層ミレニアルは、同年齢のブーマー層よりも裕福になっている一方、平均的なミレニアルは資産形成で大きく後れを取っています。
購入資金の36%が家族からの支援によって賄われており、**住宅所有が“世襲化”**している点も深刻です。
賃貸市場への波及
所有者が低金利の恩恵を受ける一方で、賃貸世帯はインフレ直撃。
- 2023年の家賃:前年比+10%
- ホームレス人口:急増
- 消費余力:持ち家層より大幅に劣後
サプライ制約と建設業の課題
米住宅市場は長年の供給不足に悩まされています。
2023年の住宅着工数は140万戸と2007年以来の高水準でしたが、同年の新規世帯数180万戸に追いつかず。
加えて、建設業は以下の課題に直面:
- 資材コスト上昇
- 労働力不足(特に移民労働の減少)
- 規制・許認可の遅れ
結果として供給は追いつかず、住宅価格の下支え要因になっています。
住宅ローンの構造が経済を左右する
アメリカ独自の30年固定モーゲージは、安定性を提供する一方で、金利上昇局面では格差を拡大させる仕組みになります。
- 低金利層:実質的に「一生涯の勝ち組」
- 高金利層:所得の大部分を住宅ローンに吸い取られる
欧州や中国と比較すると、住宅ローン設計そのものが国ごとの資産形成・リスク分布を決定づけていることが分かります。
今後の展望
- FRBの利下げ観測が高まっても、モーゲージ金利は長期国債利回りに連動するため、大幅低下は限定的
- 売り手は依然として強気で、価格は**前年比+2.2%**と下げ渋り
- 需要の手控えと供給不足が続き、**「高止まりする非流動的な市場」**が長期化する可能性
✅ 結論:
アメリカ住宅市場は 「二重の格差」 に直面しています。
- 所有者 vs 賃貸世帯
- 低金利ローン組 vs 高金利ローン組
住宅は最大の資産であると同時に、ローンは最大の金融商品。
その設計と取得タイミングが、今後のアメリカ社会の富の分布と消費行動を決定づけるカギになっています。