「本当にこれから10年の強気相場が始まるのか?」
そう聞くと、あまりに都合が良すぎる話に聞こえるかもしれない。
しかし、Fundstrat共同創業者のトム・リーは明確に「今がその起点だ」と語る。
しかも彼は単なる“楽観的すぎる投資家”ではなく、人口動態や資産移転、テクノロジーの進化といった複合的な根拠を示している。
本記事ではその主張を整理し、歴史的文脈とデータを突き合わせ、私たちがどのように投資戦略を設計すべきか考察する。
目次
トム・リーの主張を分解する
- 人口動態が市場の波を決める
過去を振り返ると、大相場のピークは必ず世代交代と重なってきた。- 1999年:ベビーブーマー世代の投資ピーク
- 2018年:X世代の資産形成の頂点
次に波が来るのはミレニアル世代であり、2030年代前半がその中心になる。
つまり、2020年代後半から資産の買い手が厚みを増す構造が整っている。
- 「直近バイアス」を捨てる
ドットコム崩壊後、株式を避け続けた人々は、その後の大相場を逃した。
コロナ後の高インフレ記憶に囚われるのも同じ罠だ。
短期の体験に引きずられず、10年単位で考える必要がある。 - 史上最大の資産移転
米国だけでも数十兆ドル規模の資産が今後ミレニアル世代やZ世代へと移る。
よりテックに親しんだ世代が資金を握れば、株式や暗号資産などリスク資産への投資が自然に増える。 - テクノロジーのSカーブが重なる
AI、ブロックチェーン、自動化、サイバーセキュリティといった分野は普及曲線の加速期にある。
生産性の飛躍は企業利益を押し上げ、市場の評価倍率を押し上げる力になる。
歴史とデータの裏付け
- 労働市場の年齢構成
25〜54歳の「プライムエイジ人口」は消費と投資の原動力。
これからの10年でミレニアル世代が意思決定層に本格参入する。 - ROICと金利の関係
名目金利が高くても、AI導入で投資利益率(ROIC)が上がれば企業価値は維持できる。
単純な「金利が高い=株安」は成り立たない。 - 欧州の変化
インフラ・防衛投資の増加により「長期停滞」から脱却する兆しがある。
世界株の広がりは相場の健全性を高める。 - 他の強気派ストラテジスト
エド・ヤーデニはS&P500の段階的上昇を予測し、モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソンも「4月の調整後に強気転換」と発言。
多数派ではないが、悲観一色ではないことは確かだ。
リスク要因と注意点
- 金利・インフレ再燃
- 財政不安や選挙リスク
- AI投資の収益化遅延
- 暗号資産規制の強化
- テーマ集中投資によるドローダウン拡大
強気相場を信じるにしても、過度のレバレッジや単一銘柄集中は「愚かな強気」だ。
現実的なシナリオ(今後3年)
- ベースケース:AI投資が利益成長を牽引し、調整を挟みながら上昇継続
- レンジケース:高金利が続き、銘柄選別の色が濃くなる
- ベアケース:信用不安や政策ショックで一時的に急落。ただし景気後退が浅ければ回復は速い
実践できる投資の型
- コア・サテライト戦略
- コア:S&P500や全世界株などのインデックス
- サテライト:AI半導体、サイバーセキュリティ、ヘルスケアAI、電力・インフラ、暗号資産
- 積立とリバランス
感情ではなくルールで投資。年1〜2回のリバランスで資産比率を整える。 - 暗号資産の役割
総資産の数%に限定し、「成長オプション」として保有。
BTC・ETHを軸に小口分散するのが現実的。
10年ロードマップ仮説
- 2025〜2027年:AIインフラ投資の拡大。株価は上昇と調整を繰り返す。
- 2028〜2030年:AI応用の収益化が進み、生産性ジャンプが利益率を押し上げる。
- 2031〜2035年:ミレニアル世代の資産ピークで相場は最高潮に。ただし過熱感に注意。
筆者の視点
強気相場を支える本質は「計算資源のコスト低下」と「制度化されたデジタル金融」だ。
AIが日常的に使えるほど安価で普及し、金融がトークン化で循環速度を増す時代には、企業利益はさらに厚みを増す。
そのとき、株式市場は新しい“適正水準”を獲得するだろう。
だからこそ、投資家に必要なのはシンプルな姿勢だ。
強気であれ。ただし、愚かであるな。
積立・分散・ルール運用という退屈な習慣こそが、未来の果実を確実に刈り取る唯一の道である。📈