AIバブルか、それとも産業革命か。
Oracle、NVIDIA、AMD、CoreWeave、Iren、Nebiusといった企業は「AI関連株」とひとくくりに語られがちです。
しかし、実際にはまったく異なるビジネスモデルと収益構造を持ち、それぞれのリスクとリターンも大きく違います。
本記事では、最新のニュースとファクトチェックを踏まえ、初心者にも分かりやすく整理し、今後の展望まで考察します。
AI関連株は「3つのバケツ」に分けて考える
AIエコシステムに関わる企業は、大きく分けて以下の3つのバケツに分類できます。
- CAPEX(設備投資)型
Oracle、CoreWeave、Iren、Nebiusなど。
巨額の資金を借入や増資で調達し、データセンターや電力インフラを建設して貸し出す。
投資すればするほど短期的な売上は増えるが、資金調達環境や電力コスト次第で一気に逆回転するリスクを抱える。 - ファブレス半導体型
NVIDIA、AMDなど。
自社では製造せず、設計に特化。製造はTSMCなど外部に委託し、高い粗利率とキャッシュ創出力を誇る。
NVIDIAはCUDAやソフトウェアエコシステムを抱え、圧倒的な優位性を維持。AMDは価格性能比と総合力で追随する。 - SaaS/AIサービス型
OpenAI、Palantir、Snowflakeなど。
ARR(年間経常収益)が積み上がるモデル。翌期のスタートラインが積み上がった分から始まるため、評価倍率は高い。だが、成長が鈍ればバリュエーション圧縮のリスクが大きい。
Oracleの戦略:負債で拡大するクラウド帝国
Oracleは現在、データセンター拡張に全振りしています。
- データセンター数を34→71に倍増予定。
- 380億ドルの負債調達を進め、NVIDIAチップなどに投資。
- 売上の約86%が「クラウド+ライセンス」に依存。
さらに、OpenAIと5年間で3,000億ドル規模のコンピューティング契約を結んだと報じられ、Oracle株は一日で約36%急騰。
1992年以来の大幅上昇となりました。
ただし注意点もあります。
OracleのCAPEXは年間2,000〜2,500億ドル規模(FY25実績:約2,120億ドル)。
また、負債総額は1,000億ドル超に達しており、金利環境が逆風に回ればリスクは一気に顕在化します。
NVIDIA:外部CAPEXの恩恵を浴びる“無敵のモデル”
NVIDIAは、OracleやCoreWeaveが調達した借金をそのまま収益に変換する存在です。
- 粗利率:約75%、純利益率:約52%(動画では56.5%と紹介されたが実際はやや低め)。
- 半年間で約240億ドルの株主還元(自社株買い+配当)。
- 現金・有価証券:約570億ドル、負債:約106億ドルと財務は極めて健全。
Oracleが借金でNVIDIAのGPUを調達する一方で、NVIDIAは借金を背負うことなく潤沢なフリーキャッシュフローで株主還元を続けています。
この「借金を負わずに外部CAPEXを利益に変える」構造は、まさにAI時代の理想的なビジネスモデルと言えるでしょう。
AMD:NVIDIAの“ステップチャイルド”か、それとも第二の選択肢か
AMDはNVIDIAに比べて資金力では劣るものの、総合力と価格性能比で市場を押さえています。
- 現金:約59億ドル、流動負債:約98億ドル → 手元資金は負債を下回るが、営業CFや与信枠で補強。
- 長期負債:約32億ドルと適度。
- ソフト(ROCm)の成熟度やクラウド採用の積み上げが評価を左右。
NVIDIAと比較すると「第二選択肢」扱いをされがちですが、大手クラウドが“デュアルソース戦略”を取る限り、AMDにも確実な需要は存在します。
CoreWeave・Iren・Nebius:AI専用クラウドの群雄割拠
- CoreWeave
AI特化型クラウド。NVIDIAとの密接な関係と供給力が強み。電力コストと拡張資金調達が課題。 - Iren(Iris Energy)
マイニング事業から派生し、再エネ電力を活用したHPC/AIインフラへシフト。電力原価が勝負。 - Nebius
旧Yandex Cloudから派生。欧州や新興市場でデータ主権対応と低遅延インフラを武器にMicrosoftと契約拡大。
これらはすべて「CAPEX依存モデル」であり、資本効率と資金調達力が将来の明暗を分けます。
価格目線(目安)
- NVIDIA:+25〜40%の上値余地(筆者試算:240ドル目標)。
- AMD:+20〜40%の再評価余地(試算:211ドル目標)。
- Oracle:理論上42%の上値余地だが、負債とCAPEXリスクを考慮し「175ドル以下で興味を持つ水準」とする投資家も多い。
※いずれも「教育目的のレンジ目安」であり、投資助言ではありません。
投資家が見るべき「正しい物差し」
- CAPEX型 → ネット有利子負債/EBITDA、電力契約、稼働率、受注残
- ファブレス型 → 粗利率、営業CF、世代交代ロードマップ、エコシステムの定着
- SaaS型 → ARR/NRR、解約率、営業レバレッジ
同じAI関連株でも、「どのバケツで稼いでいるか」を誤解すると投資判断を誤ります。
筆者の独自解釈:AI時代の勝者は誰か?
結論から言えば、外部CAPEXが続く限り最大の勝者はNVIDIAです。
- 借金を背負うことなく、OracleやCoreWeaveが調達した資金を利益に転換できる。
- 粗利率・純利益率・自社株買い余力の三拍子が揃う。
次点はAMD。
ソフト最適化と大口採用次第で「第二選択肢」から「第一選択肢の一角」へと昇格する可能性があります。
一方、Oracle/CoreWeave/Iren/NebiusのCAPEX型は短期的な成長は強烈ですが、金利・電力・資金調達環境に依存している点を忘れてはいけません。
AI需要が続く限りは追い風ですが、逆風に転じたときのリスクも相応に大きいのです。
✅まとめると――
AI関連株を一括りにするのは危険。“稼ぎ方の違い”を理解した上で、正しいKPIで評価することが勝ち残る唯一の方法です。