世界が不安定に揺れている。
ポーランドでロシア無人機が領空を侵犯し、防空システムが稼働。中東でも空爆が報じられ、「第3次世界大戦」の見出しすら飛び交った。
さらに米国では雇用統計が91.1万人も過大計上されていたことが判明。
表面的には市場を揺さぶる要素が山積みだ。
だが現実のマーケットは静かだ。
S&P500先物は上昇し、ビットコインも大崩れしていない。
なぜ市場はこれほど「無反応」なのか。
本記事では、マクロ・雇用・地政学・暗号資産の動きを総合的に整理し、投資家が取るべき視点を解説する。
市場が騒がない理由:物語の主役は「利下げ期待」
投資家が本当に注目しているのは戦争の見出しではない。
現在の主役はFRBの利下げ期待だ。
・地政学リスクは局地的・短期の騒音と解釈される
・インフレはなお変動するが、労働市場の減速が金融緩和を後押し
・「悪材料がむしろ利下げ確度を高める」という逆転の構図
だからこそ、ドローン侵入や空爆報道があっても先物市場は崩れない。
市場は「悪いニュース=株式・暗号資産にプラス」と翻訳している。
雇用統計ショック:91.1万人の幻影
米労働省は、2024年4月から2025年3月までの12カ月について年次ベンチマークの予備改定を公表し、この期間の雇用増加が累計で91.1万人過大計上されていたことを明らかにした。
月間平均の雇用増加は従来の約14.7万人からおよそ7万人強へと大幅に引き下げられる。
これは決して軽視できる修正ではない。
それにもかかわらず、市場の反応は限定的だった。
その背景には2つの理由がある。
- 古いデータ
今回の修正は過去1年分に関するもので、直近の景気動向を示すものではない。 - 政策解釈
労働市場の弱さは、FRBによる利下げを正当化する材料と解釈されやすい。
結果として、統計のショッキングな下方修正そのものよりも、「利下げ近し」という物語の強さが投資家心理を支配したのだ。
CPIを巡る期待と恐怖
次の焦点は9月11日の米CPI。
過去3回のCPI後、ビットコインは短期的に下落しており「また売られるのか」という懸念もある。
だが本質は数字の方向性ではなく市場の反応速度だ。
・上振れしても「雇用減速」が緩衝材となる
・下振れなら「利下げ確度アップ」で株・暗号資産に追い風
・結局、どのシナリオでも「緩和期待」が最終的に支配
CPI発表直後は初動に振られやすいが、落ち着いた市場は本流に回帰するだろう。
ビットコイン(BTC):レンジを抜けるか、押し目拾いか
ビットコインは11万ドル前後で揉み合い。
50日EMA(約11万3000)を奪回できるかがポイントだ。
- シナリオA:50日EMA上抜け→順張りで13万ドル台を目指す
- シナリオB:10万7000付近まで押して反発→指値拾いが機能
上昇余力は残っているが、フェイクブレイクに注意。
初動に飛びつくよりリターンムーブ確認が有効だ。
イーサリアム(ETH):20日EMA攻防が肝
ETHは20日EMA上に滞在できるかが分水嶺。
- 20日EMA上抜け・定着なら新高値更新への足場
- 50日EMA(約4000)タッチでの反発も買い候補
- 直近はEMA上での滞在に失敗続き。二度目の挑戦に注目だ
ソラナ(SOL):ウェッジの裏切りに備える
チャート上は上昇ウェッジで下落警戒が強まる局面だが、むしろ上放れの可能性もある。
- 205〜206ドルでの押し目買い
- 222ドル上抜けで順張り参戦、ターゲットは290〜300ドル
需給を左右するのはETF審査やエコシステムのバイバック。
噂先行の急騰には注意が必要だ。
アルト市場の動き
- Pump.fun/Hype
強烈な自社買い戻しと収益構造で注目。ただし「カジノ型」の循環は短命になりやすい - Pudgy関連(Pangu)
IPとコミュニティ力が強み。だが話題性が薄れると反落も速い - Brett(Base)
出来高スパイクで再浮上の兆し - Raydium(RAY)
中期上昇継続、EMAクロスが再加速の合図 - Walrus(Sui)
36〜38セントが厚い支持帯。EMAクロス成立で短期上昇も
アルトは「物語の鮮度」が命。
ニュースが消化されればボラだけ残る。
語りに惚れず、価格行動を最優先に判断することが肝心だ。
地政学リスクはなぜ効かないのか?
防空システム稼働や空爆報道にもかかわらず、市場は無反応だ。
その理由は明確だ。
- 持続性と波及度が小さいと判断されている
- 資源供給や国際金融システムに影響しない限り、価格に反映されない
- 投資家にとっては「ノイズ=ボラ供給源」にすぎない
つまり「戦争の見出し」ではなく、「経済システムへの実害」がなければ資金は動かないのだ。
投資家が取るべき戦略
- 時間軸を固定
短期イベントか中期スイングかを決める - エントリーは二刀流
押し目指値とブレイク順張りを併用 - 損切りは価格でなく仮説で
「20日EMA上で強気」などルール化 - ポジションサイズはボラで調整
- ニュースより反応を見る
価格が語ることが唯一の真実
筆者の視点:まだ陶酔には程遠い
いまの市場は「憎まれ上げ」だ。
・上がっても誰も信じず、PTSDから「ここが天井だ」と叫ぶ声が続く
・歴史的に、悲観が残る上昇は長持ちする
・真の天井は「誰もが永遠に上がると信じた瞬間」に訪れる
つまり、今はまだ相場の後半戦ではない。
BTC・ETH・SOLはいずれも燃料を残したサイクルの途中にある。
悪材料が利下げ期待に変換される限り、この上昇は「終わった」とは言えないのだ。
まとめ
- 米雇用統計の大幅修正(▲91.1万人)は衝撃だが、市場は「利下げ期待」と読み替え
- CPIや地政学は短期ノイズ、主役は金融環境の緩和
- BTCは50日EMA、ETHは20日EMA、SOLは222ドルが注目水準
- アルトは語りの鮮度で動く。冷静に板と出来高を追え
- 「憎まれ上げ」局面はまだ続く。陶酔が来るまでは強気シナリオが優位
市場は騒音を無視し、金融緩和を先取りしている。
投資家に求められるのは、見出しではなく価格の物語に耳を傾けることだ。