2030年に労働者の99%が失業する――
これはAI研究者ロマン・ヤンポルスキーが示した極端な未来予測だ。
数字の正確性はともかく、2025年のいま、労働市場・人口動態・財政の三領域で同時進行している構造変化を見れば、「リセット」が進行中であることは疑いようがない。
本記事では、AI自動化の波、人口動態の圧力、世界的な債務膨張という三重衝撃を整理し
それを踏まえた投資・キャリア戦略を探っていく。
キャリアの梯子が消える時代
かつての企業トップは現場から叩き上げた人材が多い。
ウォルマートのCEOは倉庫でトラックの積み下ろしから、GMのCEOは18歳で工場勤務からスタートした。
しかし今、その「入口」そのものがAIによって消えつつある。
・リサーチ、事務作業、コールセンター業務といった初級職は生成AIと自動化で急速に代替
・AnthropicのCEOは「5年でエントリーレベル職の50%が消える」と警告
・実際、米国のテック部門では2019年比で新卒採用が半減しているというデータもある
入口がなくなれば、経験を積む階段が消え、将来の中間管理職や専門人材の供給も細る。
つまりこれは単なる雇用危機ではなく、キャリア構造の崩壊である。
人口動態の圧力
AIによる職の消失と同時に、人口構造の変化が追い打ちをかける。
・日本、韓国、イタリア、スペインなど先進国では出生率が極端に低下
・高齢者比率は上昇し、社会保障の負担が雪だるま式に増える
・米国は移民流入に支えられているが、それがなければ同様の人口減に直面
つまり、「働き手が減るのに、初職も消える」という二重の首絞め構造が、世界同時に進行している。
世界を覆う債務の山
人口減少とAIによる雇用縮小は、税収の減少につながる。
しかし、医療や年金の支出は減らない。
政府が取る手段は一つ。
借金だ。
・IMFによれば世界の公的債務はGDP比93%、2030年までに100%に達する見込み
・フランスは債務比率114%で政治危機に陥り、内閣が不信任で崩壊
・著書『The Price of Tomorrow』でジェフ・ブースは「185兆ドルの債務増加で生まれた経済成長は46兆ドルにすぎない」と指摘
テクノロジーは本来「速く・安く・良く」をもたらすためデフレ的だが、金融システムはインフレを前提に設計されている。
この構造矛盾が膨れ上がった債務を一層危うくしている。
「大リセット」の勝ち筋とは?
システムが揺らぐ時代において、個人が生き残るためにはどうすべきか。
ポイントは3つに集約される。
1. ハードマネーを持つ
通貨が刷られ続ける中で、発行上限のある資産が価値を持つ。
・伝統的には金
・デジタル版のハードマネーとしてビットコイン
中央銀行も金を過去最高ペースで買い増している事実は、国家ですらハードマネーを無視できない証拠だ。
2. AI・ロボティクス企業に乗る
AIは「雇用を奪うもの」であると同時に、「企業の利益を押し上げるもの」でもある。
・エヌビディアはAI需要で売上が前年比50%以上増加
・テスラは自動車だけでなく人型ロボットを推進
・新興のAnthropicやPerplexityは未上場ながら急速に評価額を高めている
機械に競争で負けるくらいなら、機械を作る側に回るという発想が必要だ。
3. エネルギーとデータセンターを押さえる
AIは膨大な電力を消費する。
・IEAは2026年までにデータセンター電力需要が倍増すると予測
・米国エネルギー省も「2050年までに電力需要が倍増する可能性」に言及
・ビットコインマイニング企業IRENはNVIDIAと提携し、AI用GPUインフラ企業へ転換
AIの成長は電力と冷却システムがボトルネックになる。
だからこそ、電力会社・再エネ・データセンター関連株は次の金鉱脈となり得る。
キャリアの生存戦略
「学位」よりも「AIを使いこなして成果を10倍にできる力」が重視される時代になる。
必要なのは以下の三技能:
- プロンプト設計と成果検証
- データ処理と自動化(API、n8nなど)
- 専門知識をAIに翻訳する力(会計・法務・営業など)
毎週タスクをAIで自動化する習慣を持ち、月ごとに成果を数値化して示すことが、キャリアの防衛線になる。
まとめ:システムに飲み込まれず、同化する
AIは入口の仕事を削り、人口動態は税収を細らせ、債務は雪だるま式に膨らむ。
この三重衝撃が「大リセット」の正体だ。
だが、恐れる必要はない。
・ハードマネーで通貨劣化に備え
・AI・ロボティクスで利益成長に参加し
・エネルギーとデータセンターというボトルネックを握る側に立つ
そしてキャリアでは、AIを前提に生産性を10倍化する人材になる。
富の窓はすでに閉じ始めている。
残された時間は長くない。
行動する者だけが次の10年を勝ち残るのだ。