ビットコイン下落でも進む規制と実装──SEC×CFTC協調とVisaのステーブル革命

ビットコインとイーサはマクロの不透明感(政府閉鎖リスク・消費者マインド低下)で弱含み。

一方で、規制の明確化(SEC×CFTC)決済インフラへの実装(Visa Direct×ステーブルコイン)は前進。
短期の売り材料と、中長期の追い風がぶつかっているのが本日の全体像だ。
CoinDesk+1


目次

価格が下がる一方で「制度」と「実装」は進む

  • 米政府の一部閉鎖リスクは、10月1日(米東部)にデッドライン。
    こうした政治イベントは指標発表の遅延や政策の先行き不透明感を高め、リスク資産全般のボラティリティを押し上げやすい。
    暗号資産も例外ではない。
    CoinDesk+1
  • ただし規制面では前進がはっきりと見える。
    SECとCFTCが9月29日に共同ラウンドテーブルを開催し、「規制協調」をテーマに優先課題を議論。
    正式なアジェンダと登壇者の案内も公表され、相場に必要な「予見可能性」が高まる方向だ。
    SEC+1
  • 実装面では、VisaがVisa Directの前払資金にステーブルコインを活用するパイロットを発表。
    クロスボーダーを中心にリアルタイム送金の裏側でステーブルコインを使い、受取側は現地通貨で着金する設計だ。
    決済時間短縮・コスト低減という“地味だが巨大な”効率化が走り始めた。
    investor.visa.com+2Digital Transactions+2

SEC×CFTC「規制協調」──何が変わるのか(3つの実利)

分類の一貫性

どのトークンが証券で、どの資産がコモディティか。
ここが揃うほど、上場・開示・カストディの要件が読みやすくなり、機関の参入障壁は下がる。
SECとCFTCが明確に「協調」を掲げたこと自体が、重複規制の是正シグナルだ。
SEC+1

現物市場の監督整理

デリバティブ中心だった監督がスポットにも広がる青写真が示されれば、価格発見の質と公正性が改善する。
結果的に“悪いボラ”(薄商い時の歪み)は抑制されやすい。
SEC

州法×連邦法の整合

州ライセンスと連邦の市場ルールの噛み合わせが進めば、事業者のコンプライアンス負担が軽くなり、米国内でのスケールが効く
CFTCのファム代行議長も「協働で前進」を強調した。
cftc.gov

補足
SECのアトキンス委員長(現議長)が「新しい協調の時代」をうたった公式スピーチも掲載されている。
政策スタンスの言質(一次情報)は、将来のルールメイキングを読むうえで重要だ。
SEC


Visaのステーブルコイン・パイロット──“裏側のDX”がはじまった

  • Visaは、銀行や決済事業者がステーブルコインで前払資金を積む仕組みをテスト。
    クロスボーダー送金は受取国通貨で着金するため、ユーザーは暗号資産の価格変動に晒されず、時間短縮と手数料圧縮の恩恵を得やすい。
    investor.visa.com+1
  • 意味合いは大きい。
    ステーブルコインの役割が「投機の道具」から「決済の潤滑油」へと定着し、最終的に企業のキャッシュコンバージョンサイクル短縮運転資金回転の改善へ波及する。
    報道ではUSDC・EURCを念頭に置いた実装像も示唆されている。
    Cointelegraph

「報酬」を巡る攻防──Coinbase vs. 銀行業界の争点

  • 7月に成立したGENIUS法は、ステーブルコインの連邦的な枠組みを整備。
    利息の付与は不可だが、報酬(リワード)は許容される設計が残り、これを巡って銀行界と暗号資産業界の綱引きが続く。
    Coinbaseは報酬維持を訴えるキャンペーンを展開中だ。
    Coinbase+1
  • ブロックチェーン協会は、GENIUS法の現行維持を求める書簡を議会に送付。
    預金からの資金流出リスクを誇張だと反論し、データに基づく議論を要請している。
    政策の中心が「消費者利益」と「競争の確保」に移っている点が重要だ。
    Blockchain Association+1
  • 一方で、CLARITY法(市場構造法案)で報酬の扱いを絞り込むべきだ、とする向きもあり、上院での文言調整が注視点。
    Crypto業界・政策シンクタンクの論考でも、報酬は今や「政策フラッシュポイント」と位置付けられている。
    サーソンファンズ+1

産業側の主張の核
銀行の普通預金金利が極端に低い現状で、ネットワーク由来の価値をユーザーに還元できる報酬は競争政策上の意義があるという点。
Coinbaseの公式解説は、GENIUS法での透明性・保全要件を強調する。
Coinbase+1


AIインフラ連動──CoreWeaveと暗号資産の“計算資本”接続

  • AIインフラ大手CoreWeaveは、Metaと最大142億ドル規模のクラウド計算契約を発表。
    株価は急伸し、AI向けGPUクラウド需要の強さを裏付けた。
    マイニング施設の電力・冷却・ラック資産をAI用途に再配置する発想は、暗号資産セクターにも波及しうる。
    Reuters+2バロンズ+2
  • もともとCoreWeaveはクリプト採掘からAIクラウドへ転身した企業。
    GPU・電力という“計算資本”のボトルネックは、暗号資産マイニングとAIデータセンターで共通するため、資源配分の変化は両市場の相関に新しい回路を作る。
    バロンズ

いま押さえるべき「3つのシナリオ」

A:政府閉鎖が長期化

規制作業・指標発表が遅れ、相場の材料は減るが、SEC×CFTCのロードマップやVisaの実装ニュースのような個別の“構造ニュース”が支えになる。
CoinDesk

B:土壇場で回避

金利・データ面の不確実性が和らぎ流動性が戻る。
BTCはマクロ安心感とオンチェーン需給でじり高、ETHは手数料・L2トラフィックの実需が効きやすい(中期)。
CoinDesk

C:規制協調が具体化

スポット監督・トークン分類が示されれば、機関資金のサイズが変わる。
長期資本が入れば、ボラは“薄商い起因”から“トレンド形成型”へ質的転換。
SEC


Q&Aで最終整理(1分)

Q:価格は軟調なのにニュースは前向きに見えるのは?

短期:マクロショック(政府閉鎖・信頼感低下) vs. 中長期:制度と実装の前進(SEC×CFTC協調・Visaパイロット)。
時間軸が違う材料が同居しているため。
CoinDesk+2SEC+2

Q:規制協調の直接的メリットは?

予見可能性の上昇→コンプライアンス負担と資本コストが低下→機関流入で流動性が厚くなり、価格発見の質が上がる。
SEC

Q:ステーブル報酬はなぜ争点?

利息は禁止でも報酬は許容という設計を巡り、価値配分(銀行金利vs.ネットワーク報酬)と競争政策の観点で対立。
GENIUS法維持を求める書簡や業界キャンペーンが活発化。
Axios+1


まとめ

きょうの下げは「短期ノイズ」由来だが、「構造の追い風」(規制の予見可能性と決済インフラ実装)は着実に積み上がっている。
市場が最も嫌うのは不確実性であり、最も好むのは予見可能性。
SEC×CFTCの協調、Visaのパイロット、そして計算資本の再配置(AI×暗号資産)は、いずれも不確実性を減らす方向の変化だ。

時間軸を分けて見る投資家ほど、この局面を冷静に評価できるはずだ。
SEC+1


参考ソース
  • SEC「SEC-CFTC Joint Roundtable(9/29/2025)」および関連プレスリリース・議事案内。SEC+1
  • SEC議長 Paul S. Atkins スピーチ「Harmonization: A New Era of Collaboration」。SEC
  • CFTC 代行議長 Caroline D. Pham ステートメント。cftc.gov
  • Visa「Visa Direct Taps Stablecoins…」(投資家向けニュース)および業界メディア報道。investor.visa.com+2Digital Transactions+2
  • GENIUS法の解説・Coinbase公式ブログ、Axios Crypto。Coinbase+1
  • Blockchain Association の議会書簡・特設ページ。Blockchain Association+1
  • 政府閉鎖リスクが暗号資産に与える影響(CoinDeskほか)。CoinDesk
  • CoreWeave×Metaの142億ドル契約(ロイター、Barron’s、Investopedia)。Reuters+2バロンズ+2
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