なにが起きているのか(要点)
ステーブルコインはすでに時価総額3,000億ドル超。
決済網SWIFTまで独自ブロックチェーンを打ち出し、Visa・Stripe・Shopifyなど決済の巨人が次々に動く段階に入った。
米国ではGENIUS法が成立し、準備資産・開示・監督の枠組みが確定。
制度化の“安全レール”が敷かれたことで、国債(T-Bill)連動の巨大な需要が立ち上がる。
これがドル覇権の延命装置になるとの論調も強い。
Congress.gov+3Axios+3フィナンシャル・タイムズ+3
需要の源泉:なぜ“使われる”のか(実需×制度×収益)
実需:速い・安い・止まらない送金/決済
従来の国際送金より秒決済・低手数料。
その体験差はB2B・越境ECでS字普及を起こす。
SWIFT自らがトークン化決済を試験することは、既存インフラの置換が現実路線になった証左。
フィナンシャル・タイムズ
制度:米GENIUS法で“銀行レベル”の枠組み
100%準備・月次開示・管轄監督などが明文化。
「ステーブルは証券でもコモディティでもない」という扱いも整理され、市場参加者にとっての法的不確実性が急減。
The White House+2Congress.gov+2
収益:準備資産(金利)と規模のゲーム
大半は短期国債・現金同等物を背景に利ざやを得る。
金利低下局面の影響は残るが、総供給の増大が発行体の収益を下支え。
「数兆ドル市場へ」の観測も出ている。
The Block+1
メガテックの動き:発行・決済の“両輪”が回り始めた
Stripe:Open Issuanceで“誰でも自社ステーブル”
企業が数行のコードで独自ステーブルを発行・償還・準備運用まで管理できる基盤を公開。
Bridge買収で得たスタックを統合、準備資産をT-Bill等で運用し、共有流動性ネットワークに接続。
Stripe+2Stripe+2
Shopify:USDC決済を標準実装へ
世界数十カ国のマーチャントがShopify PaymentsでUSDCを受け入れ可能に。
オンチェーン決済の“普通化”が動き出した。
Stripe+1
Visa:クロスボーダーでステーブル活用の実証
企業間決済のプレファンディングをステーブルで行い、資金拘束と為替コストを圧縮する狙い。
Reuters
市場規模:3,000億ドル突破
2025年10月、総供給は過去最高。
制度化の加速とともにシステミックな金融ツールとしての存在感が増す。
Axios+1
政治・地政学の視点:ドル覇権の延命装置か
トランプ政権下でGENIUS法が成立。
政権関係者や発言力のある人物からも「米国債需要を補完し、ドル優位を延命」のメッセージ。
支持も反発も強く、金融主権をめぐる議論は国際的に拡大。
AP News+2フィナンシャル・タイムズ+2
投資で捉える“3レイヤー”
レイヤーA:発行体/準発行モデル(収益=準備資産×規模)
- Circle(USDC)
2025年6月にNYSE上場。
資本市場で“ステーブル経済”を買える入口。
investor.circle.com+1 - (参考)決済企業の自社ステーブル
StripeのOpen Issuanceが企業の“自家発行”を現実化。
準備運用リターンが新KPIに。
Stripe 
レイヤーB:決済レール(L1/L2=速度・可用性・手数料)
- Plasma(XPL)
ステーブル特化L1。
USDTの送金ゼロ手数料を掲げてメインネット始動、EVM互換でDeFi統合を進める。
初期はボラが極端に高く、価格乱高下が続いた点は要注意。
The Block+2Plasma+2 - 既存レールのシェア
トロンやソラナ上のUSDT/USDCフローは引き続き巨大。
実送金件数・停止歴・平均手数料で冷静に比較するのが基本。
〈指標は各チェーンのエクスプローラ・データ集約サイト参照〉 
レイヤーC:与信・RWA(利回りの裏側を支えるエンジン)
- Ethena(USDe/sUSDe・ENA)
現物ロング×先物ショート等のデルタニュートラルでドル価値と利回りを両立する設計。
手数料スイッチがステークENA(sENA)への分配を許容する方向へ。
清算・取引所カウンターパーティ・ヘッジコストを常に監視する設計思想が必要。
CryptoSlate+2AInvest+2 - Maple Finance(SyrupUSDC / SYRUP)
機関向けクレジットをオンチェーン化し、その利回りをSyrupUSDC等で提供。
貸倒・回収・担保管理が生命線。
Maple Finance+1 - STBL / USST(Reeve Collins系)
RWA担保のステーブルに対し、利回りNFT(YLD)を分離する仕組みを打ち出し。
流通供給とFDVの乖離には警戒が要る。
Cointelegraph+1 
評価のフレーム:価格より“運用とガバナンス”を見る
- 準備資産の品質・開示頻度(現金・T-Bill・リバーサル対応)
 - 償還メカニズムの実装(ストレス下で1ドルに戻れるか)
 - 運用の停止歴/障害対応(レール側:停止ゼロ日数・代替経路)
 - トークノミクス(FDV・ベスティング・買戻し/バーン・分配ルール)
 - 法域と監督(GENIUS法準拠・KYC/AML・越境の扱い)
 - 実利用指標(日次トランザクション・平均手数料・アクティブアドレス)
 
このうち1/2/5はGENIUS法の成立でベースラインが引き上がった。
残る3/4/6はプロトコルごとの差が大きく、投資の成否はここで分かれる。
Arnold & Porter+1
株式サイドの取り方(“テーマの間接保有”)
- Circle(CRCL)
USDCの直接的レバレッジ。
バリュエーションは需給相場になりやすいので、発行残高と金利環境を軸に評価。
investor.circle.com - 決済プラットフォーム(Stripe/Shopify/Visa)
自社発行・受入れ拡大・手数料最適化で、オンチェーン決済のマーケットシェアを押し上げる可能性。
既存決済手数料の置換に要注目。
Stripe+2Stripe+2 
リスク
- 規制/制裁
特定国でのKYC/AML強化やブラックリストは現実。
アプリ遮断(VPN不可)の事例もある。
Arnold & Porter - ディペグ
大口償還・法的イベントで±数%の乖離は起こり得る。 - 与信/清算
ヘッジ先取引所リスク・先物市場の流動性がボトルネックになり得る(Ethena系)。
CryptoSlate - FDV/ベスティング圧
供給解禁の売り圧と分配設計の綱引き(STBLなどは特に注意)。
MEXC - 地政学/覇権
ドル化の加速が各国の通貨主権を刺激し、規制が逆風化するリスク。
Reuters 
どこに“妙味”があるか(筆者の見立て)
制度恩恵の一次受益
USDCエコシステムや受入れ/発行インフラ(Stripe/Shopify/Visa)。
使われる度に実需が積み上がる回路が明確。
Stripe+2Stripe+2
非金利依存モデル(ヘッジ型)
金利低下局面で相対優位も。
Ethenaの手数料スイッチは注目。
ただし清算設計と分配方式の実装を必ず確認。
CryptoSlate
新興レール(Plasma)
ゼロ手数料の体験価値は大きいが、初期のボラと集中リスクは高い。
採用の持続と停止ゼロ日数をトラッキングすべき。
The Block
最後に(視点の置き方)
ステーブルコインは“値動きで儲ける資産”ではなく、使われるたびに価値が生まれるインフラだ。
勝敗は
①止まらない運用 
②確実な償還
③透明な開示 
④売り圧を制御する設計
この4点を同時に満たせるかに尽きる。
時価3,000億→数兆ドルのロードマップは、“もっと速く・安く・安全に”というシンプルなユーザー価値が後押ししている。
投資家は利用データ(件数/手数料/停止歴)と開示文書(準備・監督)を平行モニターし、物語より実務で見極めるべきだ。Axios+1
参考ソース
- 市場規模・動向:Axios、Cointelegraph、Yahoo Finance 等(3,000億ドル)Yahoo!ファイナンス+3Axios+3Axios+3
 - 既存決済の対応:SWIFTのブロックチェーン計画、Visaの国際送金パイロット、Shopify/StripeのUSDC受入れ/発行基盤Stripe+3フィナンシャル・タイムズ+3Reuters+3
 - 規制:GENIUS法(成立・概要・法的位置付け)Congress.gov+2The White House+2
 - 個別:Ethena(手数料スイッチ)、Maple(SyrupUSDC)、Plasma(XPL)、STBL/USST(YLD NFT)MEXC+6CryptoSlate+6AInvest+6
 
(投資判断は自己責任で。上記は情報提供であり、特定の売買を推奨するものではありません)


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