【論文解説】“夢を見た株は冷める”──1日で跳ねた銘柄ほど、翌月は沈む理由

📚 出典・論文情報

論文タイトルMaxing Out: Stocks as Lotteries and the Cross-Section of Expected Returns
(マックス効果:宝くじのような株式と期待リターンの断面分析)
著者:Turan G. Bali(バルーク大学)/Nusret Cakici(フォーダム大学)/Robert F. Whitelaw(ニューヨーク大学・NBER)
掲載誌Journal of Financial Economics(金融経済学ジャーナル)Vol.99, 2011, pp.427–446
DOI10.1016/j.jfineco.2010.08.014

目次

宝くじ株の罠:「1日で跳ねた銘柄」がなぜ長期で損をするのか

株式市場には「割安株はリターンが高い」「モメンタム株は強い」といった多くのファクターが存在する。
だが、投資家が“宝くじ的な夢”を求める心理が、これらの法則を覆す局面がある。
この論文が明らかにしたのは、“1か月の中で最も上昇した1日のリターン(MAX)”が高い株ほど、その後の平均リターンが低いという逆説的な現象だ。
つまり、「最近大きく跳ねた株」は、実はその後“冷める”確率が高い。


バズ銘柄を追うほど負ける?──市場の熱狂に潜む統計的罠

あなたもSNSで「〇〇株が1日で+40%!」というニュースを見て、つい買いたくなった経験はないだろうか。

多くの投資家は“夢の一撃”を追い求める。
だがデータは冷酷だ。
Baliらの研究によると、こうした“MAXが高い銘柄”は、その翌月の平均リターンが明確に低下していた。

理由は単純。
「一発で勝てる株」に群がることで、価格が過剰に吊り上がるからだ。
結果として、その後のリターンはマイナスに転じる。


MAXとは何か?──“1日で最も上がった日”が未来を語る

MAXとは何か

  • 定義
    過去1か月間の「1日の最大上昇率(MAX)」

  • 月内で+25%上昇した日があれば、その株のMAX=25%

このMAXを使って全銘柄を10グループに分けたところ、MAXが高いグループほど翌月のリターンが低下していた。


主な結果

  • 低MAX vs 高MAX(上位デシル)のリターン差
    約1.0〜1.2%/月
  • 期間
    1962年7月〜2005年12月
  • 市場調整後アルファ差
    1.18%/月
  • 等加重でも−0.65%/月(t=−1.83)
  • 高MAX上位デシルの平均MAX
    9%、12%、24%(極端に高い)
  • 低MAX銘柄
    月間平均+1.16%
  • 高MAX銘柄
    月間平均−0.02%

研究チームはこの差を「宝くじ的割高現象(lottery-like preference)」と呼んだ。

投資家は「少ない確率で大きな利益を得る」可能性に過剰な価値を置き、確率を歪めて評価している。
その結果、過剰な期待=割高な価格=低リターンという構図が生まれる。


因子調整後も頑健

この“MAX効果”は

  • サイズ(時価総額)
  • バリュー(B/M)
  • モメンタム(過去リターン)
  • 短期リバーサル(1か月の反転)
  • 流動性(ILLIQ)

を制御しても消えない。

さらに、Angら(2006, 2009)の「特異ボラティリティ(IVOL)アノマリー」をも逆転させた。
すなわち、「IVOLが高い銘柄のリターンが低い」という従来の異常現象は、実はMAXによって説明できる


リスクではなく“期待の歪み”が原因

研究者らはこれを行動ファイナンス的要因と解釈した。
投資家は「正の歪度(右尾の可能性)」を好む傾向があり、

  • 宝くじ
  • IPO初日暴騰株
  • 低位株

など、極端な“勝ちの夢”を持つ資産に惹かれる。

しかし、統計的にはこれらは長期的に最も損を出すグループだった。


「MAXフィルター」を入れるだけで勝率が上がる

1. 投資戦略への応用

MAX効果はシンプルに活かせる。
直近1か月で「1日の上昇率が極端に高かった銘柄」を除外するだけで、ポートフォリオのパフォーマンスが安定化する。

実践ステップ

  1. 各銘柄の直近1か月の最大上昇率(MAX)を算出
  2. MAX上位30%を投資対象から除外
  3. 残りからバリューやモメンタムで選定
  4. 月次でリバランス

これだけで月次リターン差+1%程度の改善効果が見込める。


2. MAX(5)の応用

1日のMAXだけでなく、「上位5営業日の平均上昇率=MAX(5)」を使うと
データの安定性が向上し、説明力も強化される。
この手法では偶発的な1日の急騰を平滑化できるため、実務でのノイズ除去に有効。


3. 注意点

  • 高MAX銘柄=低位株・新興株が多い
  • 空売りコストが高いため、ロングオンリー戦略が現実的
  • トレンドが続く場合(短期的モメンタム)との識別が必要

シンプルなルールでプロ並みのポートフォリオを構築

MAX効果は、“高ボラ銘柄全般を避けろ”ではなく、“過去に一発当たった銘柄を避けろ”というルール。
これを加えるだけで、既存のファクター戦略(例:バリュー×モメンタム)に一層の安定性が加わる。

具体的には:

  • MAX下位30%:堅実・安定株群
  • MAX上位10%:一発狙い・夢株群(避けるべき)

あなたの持ち株、“MAX”をチェックしてみよう

  1. 今保有している株の直近1か月MAXをチェック。
  2. +20%以上の急騰日がある銘柄は警戒
  3. 翌月以降のリターン低下リスクを見越し、一部利益確定または除外を検討。
  4. 新規投資ではMAXが低く、ボラティリティも控えめな銘柄を中心に組む。
  5. 自作スクリーナーやPythonコードに“MAXフィルター”を追加すれば自動化も可能。

結論:熱狂を避ける者が勝つ

Baliらの研究が示す本質は明快だ。

「夢を追う投資家が作る熱狂」は、冷静な投資家にリターンを譲る。

“MAXが高い=話題性の高い株”は短期的に華やかだが、平均的に見れば割高・低リターン・高ボラティリティ
つまり、「上がり過ぎた株を避ける」だけで、投資成果は一段向上する。


まとめ

指標内容投資上の示唆
MAX過去1か月の1日最大上昇率高いほどその後のリターン低下
平均差約1.0〜1.2%/月有意なマイナス効果
原因投資家の宝くじ嗜好・歪度選好“夢”に過大評価
活用法高MAX銘柄を除外安定した超過収益の源泉

結論:
市場で「話題沸騰株」を避けることこそ、最も簡単で効果的なリスク調整型戦略。
MAX効果は、行動心理が生む“熱狂の裏に潜む低リターン”を可視化する鏡である。

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コメント

コメント一覧 (3件)

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