2025年8月のジャクソンホール会合では、FRBが9月に25bpの利下げを実施する可能性が意識されました。ただし、労働市場が悪化しなければ「1回限りで様子見」というシナリオも示唆されており、市場は「追加利下げか一服か」の分岐点に立っています。
この金融政策の方向性は、すでに揺れ動く米国の不動産市場に大きな影響を及ぼし始めています。
目次
地域ごとの不動産市況の分断
テキサス・フロリダ:供給過剰と保険料高騰
- ダラス:中位販売価格が過去4年で最低水準、前年比▲3%。
- タンパ/オーランド:横ばい~小幅下落。Airbnbバブルの反動で投資物件の売却圧力。
- フロリダ全域:保険料とHOA(管理費)の急騰が買い手心理を冷やし、成約破談率も上昇。
- 例:サンアントニオでは22%の契約がキャンセルされ、全米ワースト水準。
→ 建築規制が緩く供給増が可能な地域ほど、調整圧力が強い。
カリフォルニア:慢性的な供給不足で高値維持
- ロサンゼルス/サンディエゴ:過去3~4年で最高水準の住宅価格を維持。
- 供給制約:厳しい建築規制と低い固定資産税負担により、価格は下がりにくい構造。
- 需要要因:2033年までに1,800万戸の住宅需要が見込まれる一方、現状の建築ペースでは520万戸不足との試算。
→ バフェットが住宅建設関連株(D.R. Horton、Lennar、Poolなど)を増やしている背景も、この慢性的な住宅不足にある。
Airbnb依存市場のリスク:パームスプリングスの例
- 2022年に95万ドルで購入した物件が、2025年には82.5万ドルに値下げ。さらに大規模リフォーム済み。
- 一時は110万ドルで売却を試みるも失敗 → 実質25%の値下げ。
- フォアクローズ(差し押さえ)物件も出始めており、Airbnbバブルの崩壊を象徴。
→ 「観光×投資」で過熱した市場ほど調整が急激。
住宅市場のマクロ要因
- 金利:利下げが始まれば再びリファイナンス・住宅投資ブームの可能性。
- 建築コスト:インフレが落ち着けばリフォーム需要や新築需要が回復。
- 保険・災害リスク:特にフロリダでは自然災害が「第三のコスト要因」となり需給を圧迫。
- 住宅ロックイン効果:高金利で住宅ローンを組み替えにくい状況だが、利下げ局面で一気に売買が活性化する可能性。
投資家への示唆
- 短期的には:テキサス・フロリダなど供給過多地域での「逆張り投資」は慎重さが必要。特にAirbnb依存エリアは要注意。
- 中長期的には:カリフォルニアなど供給制約の強い地域、住宅建設・リフォーム関連株に注目。
- 戦略:「高金利下の買い場」→「利下げでの資産再評価」の波を狙う。
まとめ
ジャクソンホールで示された**「25bp利下げ+その後の一服」**というシナリオは、不動産市場に微妙な温度感を与えています。
供給過剰のサンベルト(Texas/Florida)と供給不足のカリフォルニアという二極化が鮮明化し、さらにAirbnb市場のバブル崩壊が投資家に新たなリスクを突き付けています。
長期的には住宅不足が続くため、「どのエリアに・どのタイミングで」投資するかが最大のテーマになるでしょう。