2025年8月、アメリカの金融市場はかつてない緊張感に包まれています。
その震源地はFRB(米連邦準備制度理事会)。今起きているのは以下の3つの重大事件です。
- ニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁「低中立金利時代は終わっていない」発言
- トランプ大統領がFRB理事リサ・クックを電撃解任
- 9月5日と9日に控える「2つの経済イベント」
短期的には市場に混乱を招きますが、長期的には投資環境そのものを塗り替える可能性を秘めています。
目次
1. ウィリアムズ総裁「低中立金利は続く」発言の衝撃
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、「低中立金利(R*)の時代はまだ終わっていない」と発言しました。
中立金利とは?
- 経済を過熱も冷却もしない金利水準
- 長期的な物価・成長の均衡点を示す
多くの識者は「財政拡大や構造変化で中立金利は上昇した」と見ていました。
しかしウィリアムズは真逆の見解を提示。
➡️ 「再び超低金利時代に戻る」 というシナリオを強く示唆したのです。
歴史の流れ:「グレート・モデレーション」
- 1980年代ボルカー以降、米国は40年間にわたり金利・インフレが低下する安定期を経験
- 一時的なコロナ後インフレは「ノイズ」に過ぎない可能性
総裁は「2030年代には金利が史上最低を更新し、マイナス金利もあり得る」とまで言及しました。
投資家にとっての意味
- 住宅ローン金利の低下 → 不動産価格の上昇
- 資産バブル再来 → 株式・不動産の保有が必須条件に
- 資産を持たない人ほど取り残される
👉 資産を持つ者と持たざる者の格差拡大が加速する可能性があります。
2. トランプ大統領、リサ・クック理事を解任
2つ目の衝撃は、トランプ大統領がFRB理事リサ・クックを突然解任したことです。
解任の名目
- 2021年に「自己居住用」として二重に住宅ローンを申請した疑惑
- ミシガンの住宅を自己居住として再融資した直後に、アトランタで新たに「自己居住用」として物件購入
- 大統領はこれを「占有詐欺」と断定
トランプは「議会の授権に基づき罷免する」と声明を出し、即時解任を通知しました。
市場への波紋
FRB理事は本来、大統領の思惑で簡単に解任できる存在ではありません。
これが意味するのは、中央銀行の独立性が揺らぐリスクです。
- 株式市場:短期的にリスクオフ
- 債券市場:利回り上昇(リスクプレミアム)
- 仮想通貨:ビットコインも一時下落
背景にある狙い
トランプは9月のFOMCで「25bp利下げ」ではなく「50bp利下げ」を迫る構え。
解任劇は利下げ圧力を強める政治シグナルとも読み取れます。
3. 9月5日と9日:市場を揺るがす二大カタリスト
9月5日:雇用統計(NFP)
- 予想:+8.5万人
- 下振れれば景気後退懸念が急浮上 → 利下げ前倒し観測
9月9日:雇用統計の大規模修正(QCW改定)
- 過去半年分のデータがまとめて修正
- 大幅下方修正なら「すでにリセッション入り」との認識が広がる
👉 この2つが揃えば、9月17日のFOMCでの利下げ幅が25bpか50bpかを決定づけるでしょう。
投資家にとってのシナリオ
短期(数日~数週間)
- FRB独立性への疑念で一時的にリスクオフ
- Nvidia決算など他のイベントと重なり、相場のボラティリティ急上昇
中期(数カ月)
- 弱い雇用データ → 利下げ加速で株式は再び上昇基調へ
- 金利低下期待から、不動産株やグロース株が特に恩恵
長期(数年)
- ウィリアムズ発言が示す「超低金利時代への回帰」
- 資産インフレと格差拡大が進行
- 資産を持たないこと自体が最大のリスクとなる
結論:短期の荒波、長期の追い風
2025年のFRBを巡る動きは、投資家にとって「不安」と「希望」が同居する局面です。
- ✅ 低中立金利時代の継続:長期的には株・不動産に追い風
- ✅ FRB独立性リスク:短期的な市場の混乱要因
- ✅ 9月5日・9日の雇用イベント:景気後退か、ソフトランディングかを分ける分岐点
👉 短期的には慎重に構えつつ、中長期では資産保有を強める戦略が合理的です。
資産を持つか否かで未来は大きく変わる――。
まさに今、その分岐点に私たちは立たされています。