日経平均株価が4万円を突破し、瞬間的には4万2000円台まで上昇しました。
過熱感を指摘する声もある一方で、中長期的な成長余地はまだ十分に残されていると専門家は見ています。
楽天証券 チーフ・ストラテジストの窪田真之氏のインサイトを踏まえ、日本株投資戦略の方向性を整理しました。
短期は加熱、でも中長期は自然な上昇トレンド
窪田氏は、短期的には「上昇ピッチが速すぎる」と警戒感を示しつつも、2025年末には4万4000円という予測をすでに掲げています。
今の水準はその想定が前倒しで織り込まれているに過ぎない、という見方です。
つまり、短期的に加熱感はあるが、長期トレンドは崩れていない。
むしろ今後の企業業績やインフレ動向を踏まえると、上昇は続くと予想しています。
外国人が買い、個人が売る ― 常に逆行する構図
日本市場で特徴的なのは、外国人投資家が買えば個人は売り、逆もまた然りという動きです。
今回も同様に、外国人は旺盛に買い越し、個人は利益確定に動いています。
信用残高が膨らんでいる点もあり、個人は「売りすぎ」の傾向にあると窪田氏は指摘します。
これは1980年代の「日本人主導の相場」と異なり、90年代以降は日本株の相対的な地位低下に伴い
外国人投資家の動向が株価を左右する市場へと変化していることが背景にあります。
外国人投資家が日本株を選ぶ3つの理由
- 買収価値から見た割安性
- 不動産や持ち合い株の含み益を考慮すると、実質PBR0.5倍台の企業が存在。
- 財務が健全で自社株買い余力も大きく、米国企業との差が鮮明。
- 米国市場への柔軟な対応力
- 日本製鉄のUSスチール買収、三菱商事の北米資源開発など。
- トランプ関税下でも現地生産比率を高めることでリスク回避が可能。
- 金融・財政環境の優位性
- 日銀は利上げに慎重で、米国より緩和的。
- 政府も拡張的財政を維持し、内需や非製造業に追い風。
家計の資産構成とインフレ対応
日本の家計金融資産は2195兆円。
そのうち半分以上(1120兆円)が現金預金に偏在し、株式はわずか12%に過ぎません。
これはデフレ時代には合理的でしたが、インフレ定着局面では資産価値を毀損するリスクが高まります。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が実践する「国内外の株式・債券を25%ずつ」という分散投資は、個人にも参考になります。
特にリバランスの習慣――株高時に一部売却、下落時に買い増し――は有効です。
2030年に日経平均5万6000円?根拠は3つ
窪田氏は年率6.3%の上昇ペースを想定し、2030年に日経平均は5万6000円に達すると予測します。
その根拠は次の3点です。
- 企業の利益成長:海外展開を中心に1株利益が年2.3%拡大
- インフレ効果:名目GDPの伸びが株価を押し上げ、+2.4%寄与
- 自社株買い:発行済株式数の減少で1株利益が+1.5%増加
合計で年率6.3%の株価上昇を導けるとしています。
今狙うべきは成長株ではなくバリュー株
AIやバイオなどの成長テーマは米国株に多く、日本株からはまだ世界的プレイヤーが出ていません。
そのため、今の日本ではバリュー株(割安株)への投資が有効とされます。
特に注目すべきは以下の「3大バリューセクター」です。
- 金融株:三菱UFJ、東京海上、オリックスなど
- 資源・エネルギー株:INPEX、日本郵船、三菱商事など
- 製造業株:王子HD、ブリヂストン、ホンダなど
これらはインフレ局面で利益拡大しやすく、配当利回りも高い傾向があります。
Jリート(不動産投資信託)にも妙味
金利上昇懸念で低迷してきたJリートですが、割安感と不動産価格上昇を背景に再び見直されています。
平均分配利回りは4%以上と、依然として投資妙味が高い水準です。
短期売買ではなく、長期保有によるインカムゲイン狙いが基本スタンスとなります。
まとめ:インフレ時代の日本株戦略
- 短期的に加熱感はあるが、中長期的には日経平均5万6000円を視野に入れてよい
- 外国人投資家は割安性・財務健全性・米国対応力を評価して日本株を買っている
- 家計の資産配分は依然として現金偏重、インフレ下では株式比率を増やすべき時代へ
- 狙うべきは金融・資源エネルギー・製造業のバリュー株
- Jリートは割安なうちに仕込み、長期で保有すれば安定収益源となる
2025年は、インフレと企業変革を追い風に「株式比率を増やす絶好のタイミング」と言えるでしょう。