あなたのスマホの中に、次の銀行がやってくる。
ロビンフッドとコインベース。アメリカ発の2社が、いま世界の投資体験を根本から塗り替えようとしています。
片や株式投資をゼロ手数料で大衆化したロビンフッド。
もう一方は、暗号資産の“正規ルート”を開拓してきたコインベース。
2025年現在、この2社は互いの領域に踏み込みながら、「お金の未来=金融スーパーアプリ」の覇権を競っています。
この記事では、以下の5つの観点からこの2社を徹底比較・考察します。
- 創業の物語と戦略思想
- プロダクトと収益構造の比較
- 株価とバリュエーションの違い
- 成長戦略と規制の壁
- 勝ち筋とリスクの構造的違い
1. スタートアップ神話:反逆者 vs 伝道者
まずは創業者とその背景から見ていきましょう。
ロビンフッド:ウォール街の壁を壊した若者たち
2013年、スタンフォード卒のウラジミール・テネフとバイジュ・バットは、証券業界の不平等に疑問を抱きます。
当時、個人投資家は1回10ドルも払って取引していたのに、大口投資家はほぼ無料。
この構造を破壊しようと、彼らは手数料ゼロの株取引アプリ「ロビンフッド」を立ち上げます。
VCには70回以上断られましたが、最終的にa16zやTim Draperらから資金調達に成功。
その後はSnoop DoggやJared Letoまで出資者に名を連ね、IPO時点での資金調達額は56億ドル超に。
コインベース:暗号資産を正規ルートにした開拓者
一方、2012年創業のコインベースは、アルゼンチンでインフレの脅威を見たエンジニア、ブライアン・アームストロングによるもの。
彼は「誰でも簡単にビットコインを買える仕組み」が必要だと考えました。
ゴールドマン出身のフレッド・エールサムとタッグを組み、米国で初めて合法的に暗号資産を売買できるUXを提供。
Yコンビネーターの支援から始まり、NASDAQやUSAAも支援に加わるなど、伝統金融との“架け橋”として拡大しました。
2. プロダクト比較:あなたの財布を代替するのはどっち?
ここではユーザー体験と機能性の観点から両社を見てみましょう。
ロビンフッドの特徴
- 株・ETF・オプション・暗号資産を1つのアプリで操作可能
- 手数料ゼロ(代わりにPFOF=注文を業者に流す手数料で稼ぐ)
- 月額5ドルの「ロビンフッドゴールド」で高機能ツールや高金利
- クレジットカードのリワードをそのまま投資に充当可能
- 最近では退職口座やトークン化株式の提供も開始
- 独自ブロックチェーン「Robinhood Chain」を開発中
コインベースの特徴
- 取り扱い暗号資産は300超、業界でも最大級の網羅性
- 初心者からプロまで対応(Coinbase One、Coinbase Advanced)
- Ethereum L2「Base」を構築し、取引・決済・ソーシャル機能を一体化
- DeFi、NFT、ミニアプリまでを暗号資産ネイティブで統合
- ETFのカストディを担い、機関投資家からも信頼
ここで明確に分かれるのが、“UI最適化 vs インフラ整備”という戦略の差です。
3. 株価とバリュエーション:評価は何を映しているか?
数字は冷静です。投資家は何を評価しているのか?
指標 | ロビンフッド | コインベース |
---|---|---|
株価(2025年8月) | $100超 | $300台 |
安値からの上昇率 | +700%以上 | +800%以上 |
時価総額 | 約1,000億ドル | 約800億ドル |
PER(株価収益率) | 約57倍 | 約29倍 |
PSR(株価売上倍率) | 約28倍 | 約12倍 |
ロビンフッドは急成長&リテールの熱狂で高倍率。
コインベースは基盤としての安定性が評価されつつも、相対的にバリュエーションは控えめ。
つまり、「派手なロビンフッド、地味に底力のコインベース」という構図。
4. 成長戦略と規制リスク:最大の試練
両社の成長には明確な「天井」となる課題があります。
ロビンフッドの懸念点
- PFOFがEUで2026年に禁止予定。米国でも議論加速中
- トークン化株式に対する規制が未整備。法的グレーゾーン
- セキュリティ面で過去に4,500万ドルの和解金
- GameStop事件のトラウマが未だ一部投資家に残る
コインベースの課題
- 2025年に3億ドル超のハッキング損失
- 手数料が高く、競争激化で圧迫されるリスク
- とはいえ規制環境は2025年以降で一気に追い風へ
- SECとの戦いを経て、今や業界の“正規ルート”扱い
つまり、ロビンフッドは規制変更が生命線であり、コインベースは信頼の維持が勝負どころです。
5. 本質的な違い:誰が“未来の金融OS”になるか?
両社とも「金融スーパーアプリ」を目指しているのは事実です。
しかし注目すべきは、そのアプローチ。
- ロビンフッド:UX重視。株・暗号資産・退職・カード・予測市場をスマホ1画面で完結
- コインベース:インフラ重視。Base上で開発者と顧客を繋げる暗号資産エコシステムのOS
将来的には、ロビンフッド=“iPhone”、コインベース=“iOS”という関係が成立するかもしれません。
まとめ:2025年現在の結論と投資家への視点👑
観点 | 勝者 |
---|---|
UI・初心者向け体験 | ロビンフッド |
暗号資産の網羅性とセキュリティ | コインベース |
株価リターン | 両社とも優秀(ドロー) |
規制との親和性 | コインベース |
将来的OS化の可能性 | わずかにコインベース優位 |
両社ともに未来を変えようとしています。
だが現時点では
「日常の財布を奪う」ロビンフッド vs 「金融のOSになる」コインベース
どちらが正解かは、あなたの投資哲学次第です。
📌 短期で爆発力を狙うならロビンフッド
📌 長期でエコシステム構築に賭けるならコインベース
それが、2025年の金融スーパーアプリ戦争の現在地です。