暗号資産業界では“革新”と“詐欺”が紙一重だ。
だが今回、その境界線を踏み越えてしまったのではないかと疑われる構図が現れた。
ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLFI)という謎のトークンと
NASDAQ上場企業のALT5 Sigma(ALTS)が結託し
さらにエリック・トランプが取締役に就任するという派手な演出付きで、一大スキームが展開されている。
🔍【要点】何が起きているのか?
- WLFI
トランプファミリー発の暗号資産。
2024年にローンチされ、35,000人以上の初期購入者を獲得。
発行者側であるトランプ一族が約225億トークンを保有しているとされる。 - ALT5 Sigma
本業が定まらない赤字企業。
かつては家電リサイクル業→暗号マイニング→バイオテック→フィンテックと転身を繰り返し、直近の四半期でも900万ドル以上の赤字を計上。 - そして今、ALT5が15億ドルの新株発行を通じてWLFIを大量に購入し、「暗号資産トレジャリー」を作るという。
この構図、どこかで見たことがないだろうか?
🧠見た目は合法、中身は抜け道?「循環取引」による出口戦略
✅ 第1段階:スキームの骨格
- トランプ家がWLFIトークンを発行し、多額の資金を調達(報道では初期調達額5.5億ドル以上)
- トークンには「売却制限」付き(例:最初は20%しか売却できない)
- ALT5が新株を発行して資金を集め、WLFIを買い支える(=流動性供給)
- 結果として、トランプ家がロック解除された分を“合法的に”売却して資金回収できる
これはいわば、自己関係者による“外部買い手の演出”であり
「出口のための入り口」を自分たちで設けているに等しい。
🏢ALT5という“乗り物”の正体
🔄 迷走の歴史
- 家電回収企業(Appliance Recycling)
- ↓
- 暗号マイニング企業(が、ハロウィンの嵐でマイニング施設が破壊され失敗)
- ↓
- バイオテック企業(鎮痛剤開発と称するが売上実績は乏しい)
- ↓
- 現在:暗号資産フィンテック企業
📉 直近財務の実態(2025年Q2)
- 売上:約638万ドル
- 粗利:約278万ドル
- 最終赤字:約910万ドル
- 現預金:約2900万ドル
- 債務:約3800万ドル
→ 資産を売却して資金調達するしかない状態であり
実質的には株式発行による資金吸収を繰り返す“株式ATM”化している。
👥トランプ家とALT5の接続点:透明な関係者取引?
- エリック・トランプ:ALT5の取締役に就任
- Zack Witkoff:WLFI共同創業者&ALT5の会長
- Steve Witkoff(元トランプ政権中東特使)の息子が経営陣に
つまり
「売る側(WLFI)」と「買う側(ALT5)」のどちらにも、トランプ家人脈が深く関与している。
これでは客観的な需給形成が成り立たない。
しかも、ALT5のWLFI購入価格は市場取引価格より大幅に安いとされ
トークン側にとっては見かけ上の上昇材料=“見せかけの値上がり”となる可能性もある。
💰最も危険なシナリオ:「分散型ラグプル」
通常のラグプルとは違う
- 一般的な詐欺は、価格高騰→大量売却→価格暴落→投資家損失
- 今回のスキームは、ALT5が買い支えるため、価格が維持される
- 結果、内部者は少しずつ売却して現金化できる
- 暴落が“後ろ倒し”になる=時間差型の巧妙な脱出
📈株式市場とメディアの反応
- ALT5の株価は、15億ドルの増資発表後に20%以上下落
- しかし、FOX Businessなどで「エリック・トランプ出演」「NASDAQ鐘鳴らし」などの演出が展開され、個人投資家へのPRは徹底
まるで、“合法スキーム”を政治的・感情的に正当化するキャンペーンのようだ。
🧾投資家が問うべき8つの質問【保存版】
- ALT5は実際にWLFIを何ドルで、何トークン購入したか?
- ALT5はいつ・いくらで追加発行する予定か?
- WLFIのユースケースや収益性は実在するか?
- トークンのロック解除スケジュールはどう設計されているか?
- ALT5の財務は継続性があるか、バランスシートが健全か?
- SECはこの関連当事者取引をどう見ているのか?
- トランプ家とWLFIの所有構造とガバナンス構造の説明責任は?
- ALT5がWLFI保有によってどのような収益源を得る設計か?
🧩結論:「合法なラグプル」は“モラルなき新金融”かもしれない
トランプ家のブランド力と、ALT5の上場インフラ、そしてWLFIという幻想資産。
これらを使って作られたこのスキームは、ある意味で「完全に開示された詐欺」だ。
たしかに、法的にはギリギリセーフかもしれない。だが投資家からすれば
「合法」かどうかよりも、「実態」があるかどうかが重要だ。
🔚最後に:物語ではなく、数字と開示を信じろ
このWLFI×ALT5劇場は、「ミーム通貨」と「上場企業」の境界が完全に溶けた新型事例だ。
私たちが学ぶべきはただ一つ:
「トークンも株式も、売る人間が誰か」を見よ。
価格に騙されず、開示とバリュエーションの整合性をチェックする姿勢こそが、暗号資産時代を生き抜く唯一の盾だ。