【GOLD】金が3,500ドル突破:なぜ動いたのか、次に起こること

金価格が再び動き始めています。

なぜか?と問われれば「誰にも分からない」と答える人も多いでしょう。

しかし現実には、金は単なる“光る石”ではなく、歴史的・制度的な背景のもとで動いています。

2025年9月現在、金は1オンス=3,500ドルを突破し、50年以上前の金本位制廃止時(1オンス=35ドル)の実に1,000倍の水準に到達しました。

この記事では、金価格上昇の背景と投資家が知るべきポイントを整理します。


目次

金は「金融政策を先取りする」

過去のチャートを振り返ると、金の値動きには特徴があります。

それはインフレを待たずに動き出すということです。

たとえば2019年。世界の金融市場で流動性が不足し、FRBが「QEではないQE」でレポ市場を救済した時期、金価格はその直前から上昇を開始しました。

そして2020年の大規模なマネー供給の波を先取りするように、金は一気に50%以上上昇しました。

注目すべきは、この段階ではまだ消費者物価にはインフレが現れていなかった点です。

金は「これから金融が緩む」と察知した段階で動く

だからこそ、インフレ率がニュースに出てから買うのでは遅いのです。

2020年以降も同じ構図が繰り返されました。

2020〜2024年、金は横ばいを続けましたが、2024年3月に2,000ドルの壁を突破すると、再び急騰。

現在の3,500ドル到達も、近い将来の利下げや量的緩和を織り込み済みの動きだと考えるのが自然です。


中央銀行が最大の買い手

金価格の動きが金融政策と連動する理由は明快です。

中央銀行自身が最大の買い手だからです。

1990年代、各国の中銀はドル資産、特に米国債を積極的に保有し、金は売却され続けました。

しかし2015年頃から潮目が変わります。

各国中銀は米国債を減らし、金の保有を増やし続けてきました。

そしてついに、中銀の金保有量は米国債を上回る水準に達しました。

これは「脱ドル化」の加速を意味します。

ただし国際取引におけるドルのシェアは依然として50%以上と高水準です。

つまり現状は、支払いにはドルを使い、価値保存には金を使うという二重構造。

これは貨幣経済で知られるグレシャムの法則(悪貨は良貨を駆逐する)の典型例です。


ドルの未来と金の役割

「ドルはすぐに崩壊するのか?」といえば答えはノーです。

基軸通貨の地位は数年で崩れるものではなく、歴史的に見ても数十年単位で移行してきました。

しかし、現在起きている現象、中銀の金買い増し、ドル取引の増加、そして金価格の上昇は、もし将来ドルが基軸通貨の座を降りるとすれば必ず観測される兆候です。

だからこそ投資家はこの動きを軽視できません。


投資家が取るべき行動

では、個人投資家はどう金と向き合うべきでしょうか。

  1. 現物保有が基本
    「持たざるリスク」を避けるには手元に置くのが一番です。
    ただし安全性の問題から、自宅保管が難しい人は信頼できる海外保管サービスを選ぶべきです。
    条件は「割当済み・分別管理・保険付き・独立監査あり・没収の歴史がない国」。
  2. ETFで価格連動を取る
    米国のGLDなどは世界の大手ヘッジファンドも利用する王道。
    手軽に価格変動をポートフォリオに組み込めます。
  3. タイミングに注意
    金はインフレを待たずに動くため、「物価が上がったから買う」では遅い。
    現在の3,500ドル突破も、その多くは既に将来の政策を織り込んだ結果です。
    短期売買なら過熱感に注意が必要です。

金は“未来通貨”のプロキシ

今回の金高騰は単なる資産防衛の動きではなく、通貨システムの未来を先取りする指標だと考えます。

中央銀行がドルを減らし、金を増やしている構図は

「次の基軸通貨候補はまだ現れていないが、ドル一極体制に綻びが出ている」ことを示しています。

私の見立てでは、近い将来すぐに「金本位制回帰」が起きるわけではありません。

しかし、金はAI・デジタル通貨時代における“信頼の裏付け”としての役割を強めていくはずです。

世界が不確実性を増すほど、金は「最後の担保」として輝きを増す。

3,500ドル突破は、その序章にすぎないかもしれません。

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