9月は株式も仮想通貨も軟調になりやすい月として知られています。
歴史的に“Rektember”と呼ばれる所以です。
Rektember(レクテンバー)とは?
大暴落を意味する「wrecked」の誤表記である「rekt」と、9月を意味する「September」を組み合わせて「Rektember(レクテンバー)」と呼ばれています。
しかし一方で、10月以降は持ち直しやすく、特に年末にかけてはリスク資産が上昇しやすいシーズンが訪れます。
本記事では、米国経済の現状、景気先行指標、製造業の動向、そして米財務省の借換えがもたらす“隠れた流動性”まで
投資家が注目すべきマクロ要因を整理し、Q4をどう迎えるべきかを考察します。
景気は減速せずに粘っている
まず米国経済の足元。
直近の四半期GDPは年率3%超の成長を維持し、消費も強さを見せています。
7月の個人消費は前月比プラス0.5%、インフレ調整後でも0.3%の伸び。
特に自動車や家具、衣料など耐久財への支出が増え、家計がまだ余力を持っていることが分かります。
レジャー関連はやや鈍化したものの、全体を崩すほどではありません。
つまり、米国の消費者は“必需品だけでなく攻めの買い物”を続けている。
この姿勢が続く限り、仮想通貨市場にも資金は細く長く流入しやすいのです。
先行指標が示すのは“底堅さ”
リスク資産に先行する景気指数を見ると、楽観が広がりつつあります。
債券利回りや商品価格、海運運賃を束ねたグローバル景気指標は上向きに転じ、S&P500の先行を示唆。
さらにカンファレンスボードの景気先行総合指数(LEI)は小幅マイナスでも、同機関は「近い将来の景気後退は想定していない」と明言しています。
要するに、米経済は“減速はしても崩壊はしていない”。
この安心感が投資家心理を支えています。
製造業の二つの顔
ISM製造業PMIは8月に48.7と contraction(縮小圏)ですが、7月から改善。
一方でS&P Global製造業PMIは53と拡大を示しました。
両者の乖離はあるものの、歴史的にISMが48前後をつける局面からは株式が大きく上昇に転じる例も多い。
製造業の“底打ちのサイン”として注目されます。
財務省の“借換えの壁”が隠れたカタリストに
ここで重要なのが米財務省の動き。
今後90日間で5兆ドル超の米国債が償還を迎えます。
投資家に戻るその資金は再投資され、一部は株や債券、そしてビットコインに向かう可能性があります。
特に短期国債(Tビル)中心に借換えが行われれば、現金が市場に循環しやすくなり、事実上の流動性供給となる。
QE(量的緩和)とは呼べなくとも、それに近い効果が働きます。
これがQ4の強気シナリオを裏打ちする“ステルス流動性”です。
ETFがサイクルを長期化させる
今回のクリプト相場は、これまでの“急騰・急落”のサイクルと違い、上げ下げが緩やかです。
ビットコイン現物ETFの存在が背景にあり、現物の買い支えと過度なレバレッジ抑制が同時に作用しているためです。
8月にレバ清算が進んだことで、秋相場の反発の土台はむしろ固まったと考えられます。
金利と労働市場
市場は9月以降の利下げ可能性を強く意識しています。
労働市場の緩みとインフレ鈍化が続けば、実質金利はピークを越え、ドルの強さも和らぐ。
リスク資産にとっては追い風です。
シナリオ別の見通し
ベースケース
・短期債中心の借換えで流動性改善
・GDPは減速してもソフトランディング
・ETF流入が続き、ビットコイン主導で上昇
強気ケース
・利下げ+短期債偏重の借換えで金融条件が一段と緩む
・機関投資家の年末ラリーでリスク資産全面高
弱気ケース
・長期債発行やTGA積み上げで流動性が引き締まる
・インフレ再燃で実質金利が上昇し、上値重くなる
投資戦略の指針
- 現物コア+分散買い
9月はドルコスト平均法でコツコツ積み立て、10月以降の反発を待つ。 - レバレッジ抑制
清算リスクを避け、証拠金は通常の半分以下に抑える。 - テーマ選別
ビットコインを軸に、L2、インフラ、ステーブル関連の実需系アルトを組み合わせる。 - イベント管理
FOMCやCPI、雇用統計、財務省入札スケジュールを常にチェック。
まとめ:Rektemberを仕込み月に変える
9月は相場が試される時期ですが、米経済の底堅さ、先行指標の改善、財務省の借換えによる流動性供給、ETFフローの持続という材料を考えれば、10月からの上昇に備える合理性は高い。
二歩進んで一歩下がる相場を前提に、今は揺さぶりを利用して仕込む時期。
Rektemberを“試練”で終わらせず、“準備の月”に変えることが、Q4を収穫期にする最短ルートです。